ようやく完成しました。
DDG (Digital Dial Gauge) 制御式電動フォーカサーです。
フォーカサーの位置検出をモーターエンコーダーではなく、DDGによる実測値によって確定します。
クレイフォード型のフォーカサーを使用する時、モーターエンコーダ式では駆動部のすべりによって実際の位置がずれていき、エンコード値が正確な位置とはならないことがあります。特に天頂方向に向いたときなど、ドローチューブにかかる重力負荷は無視できない場合があります。
※厳密に言うと、ピニオンギヤ型のフォーカサーの場合も鏡筒の傾き(ドローチューブへの重力負荷)によってバックラッシュの状態が変わるためエンコード位置がずれることがあります。
そこで、モーターのエンコーダ値による位置決めではなく、ドローチューブの移動量を物理的な実測値によって位置を特定する方法でフォーカサーを制御します。
ドローチューブの移動量計測には、市販されている安価なDDG (Digital Dial Gauge) を使用します。DDGの計測値をフォーカサーコントローラが取得できるように改造し、実測移動量から現在位置を管理特定します。
駆動部
駆動部としてはモーター部分とDDG部分があります。フォーカサーノブを回転させるモーターの取り付けは、取り付ける鏡筒やフォーカサー機構によって異なるので割愛します。
参考までに、私の環境はこんな感じになっています。
DDG部分ですが、ダイヤルゲージ測定子をドローチューブに固定した基準板に当たるようにDDG本体を鏡筒(クレイフォード鏡筒側)に固定しています。
ドローチューブが動けば測定子が動くようになっていればOKです。
DDGの示す数値を電動フォーカサーコントローラ側で取得できるように改造します。改造・計測値の取得方法はここで書いた通りです。
実際にはDDGからコントローラへ電源ラインを含めて6本の配線で繋がっています。
※デジタルノギス等のリニアエンコーダ型の測定方法でも同じように使用できます。
※DDG型を採用した理由はメンテナンスの容易さ(取り外しが簡単)と、測定手法としてシンプルで歪みが入りにくいと考えたからです。
動作の仕組み
フォーカスIN/OUTのコマンドにてフォーカサーコントローラがモーターを駆動します。同時に、DDGによって計測されるドローチューブの移動量がコントローラへフィードバックされ、目的の移動量に達するまでモーター駆動を続けます。
目的の移動量に到達したらモーターを停止します。
モーターの回転数(ステップ数)ではなく、あくまでもDGGの実測値を使用します。
実際の動作
フォーカサーをIN/OUTへ繰り返し移動させ、元の位置に戻す様子を動画にしました。数μmの誤差はありますが、移動精度としてはかなり正確になっていると思います。
今回はオープンソースのフォーカサープログラム、myFocuserPro(Moonliteフォーカサー互換)を改造してINDI等から制御できるフォーカサーコントローラを作製しました。
考察
以下の考察は今回の実験で得られたデータを基にしています。使用するクレイフォードやモーターなどの条件によっては当てはまらない場合がありますのでご注意ください。
オーバーランと測定誤差
モーター駆動結果の計測値をフィードバックするので、駆動スピードによってはオーバーランが発生することがあります。
実験の結果、数μm程度のオーバーラン誤差が見られましたが、計測タイミングが合わなかったり、駆動系の歪みの戻りがあり完全に解消することはできませんでした。
動画では、移動目的位置が数十μm(20µm~100µm程度)になったらモーター速度を落とし、計測データがより落ち着いた状態で取得できるようにしています。
また、実用範囲において目標値ジャストでの停止は難しいため、ある程度誤差の許容はやむを得ないと考えますす。
信頼性
鏡筒がどの方向を向いていても、ドローチューブのすべりを気にすることなくフォーカサーの正確な位置制御ができるようになったと思います。
また、すべりやバックラッシュを含んでいるモーターのエンコード値ではなく距離の実測値を基にした位置把握なので、絶対位置にぼほ等しい位置制御ができます。
ますます精度の高い自動化への道が開けたかなと。
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